著者
小谷 允志
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.69, pp.3-19, 2015-12-15

欧米に比べ日本の記録管理・アーカイブズは、立ち後れが目立つ。なぜ日本ではこれらが根付かないのか。その要因を探り、それに対する処方箋(対策)を考えるのが本稿の目的である。ここではその要因を、日本の組織、日本社会に内在する特性に起因する、より本質的なものとして捉え、それらを、(1)"今"中心主義、(2)無責任体質、(3)合理性を欠く意思決定プロセス、の三つとした。またそれに対する処方箋(対策)を記録管理・アーカイブズに携わる者の果すべき役割として捉え、(1)記録管理・アーカイブズの重要性を説く、(2)現用と非現用をつなぐ、(3)専門職体制の確立、の三つとしている。
著者
嶋田 典人
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.65, pp.48-64, 2013-11-30

学校という「組織」とそれを構成する教職員という「人」が、公文書を現用文書として管理している。本稿では主に教員について日々多忙な業務と文書管理の関係を若干の経験も交えながら「記録管理」の視点から考察する。国や地方公共団体、文書館などの他の行政機関・組織との関係について法的視点を交えながら述べる。現用文書としての保存年限が過ぎ、非現用文書となった時に歴史的公文書として保存されているのか、学校史編纂事業を通して、現用文書と非現用文書の連続性、文書のライフサイクルについて実態を見る。歴史的公文書は「学校アーカイブズ」であり、そのより良い保存と利用について、学校組織内での取り組みについて考える。最も重要であるのは、児童・生徒の教育への活用である。また、地域の拠点としての学校の役割と地域住民の利用について考察する。
著者
佐藤 研司
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.41, pp.1-7, 2000-11-15

情報過多という状況が出現した要因として、インターネットに代表されるように誰でもが手軽にあらゆる種類の情報を入手できるような環境が整い始めたことや、情報の蓄積や処理にかかるコストが大幅に低下していることなどがあげられる。さらに、企業が他社との差別化の手段として情報による付加価値作りを重視し始め、より一層情報の果たすべき役割が広範囲にわたっている。情報過多という状況下において、情報そのもの価値よりも、情報をどう組み合わせ、どう分析し、新しいシナリオを創作できるのか、そのためには、個々の企業が個別に情報を管理し、排他的に活用するのではなく、情報を共有化しできるだけ多様な視点からの異質な情報の組み合わせを可能とする体制の整備が求められる。こうした情報の共有化はすでにグローバル・スタンダードとなりつつあり、日本企業の速やかな対応が求められる。
著者
村橋 勝子
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.45, pp.34-40, 2002-11-30

社史は明治以降、100年以上にわたって継続的に刊行されながら、ほとんど利用されず、実態も明らかでなかった。しかし、よく見てみると、社史はユニークかつ多様な情報・データを満載しており、情報源として魅力あるものである。社史の定義、刊行実態や要因、特色、魅力等を考察し、今後の課題等を述べる。
著者
大蔵 綾子
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.57, pp.25-44, 2009-05-30

本稿は、2008年に衆議院において情報公開制度が設けられたのを契機として、立法府における情報公開の新たな展開につき現状と課題を提示するものである。
著者
浅野 一弘
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.42, pp.53-61, 2001-03-31

戦後の日本外交にとって、米国の存在が大きかったことはいうまでもない。それは、日本が米国主導のもとで占領され、独立を果たしたからである。また、その後もわが国は、国際政治・経済上の重要な局面においてかならずといっていいほど、米国の助力をあおいできた。こうした状況は、「米国追随外交」と揶揄されてきた。それゆえ、歴代の首相にとって、日米首脳会談は外交上の最大のイベントであった。そして、そこで発表される「共同声明」もマスコミの高い関心を集めるところとなった。共同声明は、幾多にわたる日米間の事務レベル協議をへて、作成される。どれほど慎重を期してつくられた文書であっても、それが公表されると、さまざまな反響がおこる。本稿では、これまで日米両国間において話題をまきおこした、日米「同盟関係」、「20%条項」、「客観基準」といった文言をめぐる政治的軋轢について検証する。そして、外交文書の公開に対する日米両政府のとりくみの違いについてもふれている。
著者
坂口 貴弘
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.47, pp.15-33, 2004-03-31
被引用文献数
1

記録史料として長期的に保存すべき記録を特定するプロセスである「評価選別」をめぐる従来の議論は、記録の生涯を現用、半現用、非現用の3段階に区分する「ライフサイクル」論にその基礎を置いていた。だが近年、電子記録の普及を契機として、記録と記録史料とを区別せずに統一的な実体としてとらえる「記録連続体」論が、ライフサイクルに代わる理論モデルとしてオーストラリアを中心に台頭しつつある。筆者はまず、この理論が登場し発展してきた過程を分析する。特に、同理論の主唱者として重要なアサートンとアップワードの議論を詳しく紹介する。さらに評価選別における記録連続体理論の適用例として、主に機能分析のプロセスに着目しつつ、オーストラリア国立公文書館における事例を検討する。
著者
大蔵 綾子
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.55, pp.13-35, 2008-05-30

わが国の学校において、1990年代に注目を集めた情報公開問題は、多くの地方公共団体で指導要録の全面開示が決定されるなどして一定の進展をみせた。しかし、情報公開を実施するための文書管理の方策、特に文書管理規則等のような制度に関する検討は今後の課題である。国の行政機関における文書管理は、「行政文書の管理方策に関するガイドライン」に沿うこととされたため、文書管理規則等については、以前にみられた省庁間における差異は、問題を残しながらもある程度解消されている。これに対し、地方公共団体では、現在でも文書管理に関する制度は地方公共団体によって区々であり、文書管理規則等の内容に相当の差異が認められる。そのなかでも、学校は教育委員会の下におかれているため、差異の程度が複雑になっている。そこで、本稿では東京都特別区を中心に取り上げ文書管理規則等の内容を比較することにより現状分析を行った。その結果、以下の課題が明らかになった。第1に、文書管理規則等の設置背景がそもそも事務の効率化にあるため、情報公開や歴史的文書の保存を含めた文書のライフ・サイクルを保障するような内容でないということ、第2に、公立学校に特有の人事制度が原因で文書管理担当者が制度として確立されていないこと、第3に、公文書館が未設置であるために、文書管理規則等において移管先を指定することが不可能であることがあげられる。これらの現状を踏まえて、文書管理規則等を整備するための課題を提起する。
著者
古賀 崇
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.64, pp.67-76, 2013-03-31

筆者は2011年6月に共著書として『研究ベース学習』を上梓した。本書は「おもに大学1年生向けに研究を体験してもらうための指南書」として書かれたが、その内容は記録管理の領域で研究に取り組もうとする人々、特に現場での業務に従事しながら論文執筆を行いたいと考える人々にとっても有益なものと考える。そこで本稿では、『研究ベース学習』での筆者担当部分などに基づき、「研究活動に際しての学術文献の探索・読解・評価」と「論文執筆の方法」を概説する。
著者
中島 康比古
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.49, pp.20-38, 2005-03-31
被引用文献数
2

近年、レコード・アーカイブズ・マネジメントの世界では、技術的には電子記録の爆発的普及、社会的には情報公開・個人情報保護法制の整備、理論的にはポストモダニズムの影響を背景にして、レコード・コンティニュアムという新たなパラダイムがオーストラリアから登場し、議論の的となっているが、このパラダイムの紹介・考察は日本では緒についたばかりである。このパラダイムの提唱者であるフランク・アップウォードやスー・マケミッシュの議論に加え、このパラダイムに対する反響の一例として、カナダのテリー・クックの見解を詳しく紹介すると同時に、このパラダイムの登場が意味するものについて考える。
著者
日野 祥智
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.61, pp.72-79, 2011-12-26

脚本は、映画や放送番組の骨格でありそれ自体が貴重なメディアアセットであるにも拘わらず、映画や放送番組の完成と同時に捨てられる宿命を帯びてきた。本稿では、「脚本」という文化資源アーカイブの構築に着目し、その課題と未来展望を論じる。具体的には、東京大学大学院の馬場章氏の脚本アーカイブ構想、吉見俊哉氏の文化資源アーカイブ理論、小川千代子氏の記録のライフサイクル論の三種の先行理論を用いて、筆者の考える脚本アーカイブの新モデルを導き出す。このモデルに立脚し、脚本それ自体のデジタルアーカイブ化を一歩進め、脚本により作成された映画やテレビ番組の動画映像に脚本が持つテキスト情報を同時に見せることを可能とした著者開発の動画連動型脚本検索エンジンの機能及び特色を紹介し、脚本アーカイブの未来への展望を述べる。